※当初の予定では176条は前後半の2回でお送りしようと考えていましたが、3回になってしまいます。どうかご容赦願います。
MIKEさん上の件はよろしくお願いします。
試験対策シリーズ・「物権法/逐条解説」その2(後半の1)
1「物権行為の独自性」=例えばいまある土地についての売買が行われたとします。そうなると、まず当事者間で当該土地の所有権を売主が買主に移転すべき債務を負います(第1段階/債権行為)。そしてその履行のために現実に当該土地の所有権を買主に移転する(第2段階/物権行為)という経路を辿ることが考えられます。「物権行為の独自性」の問題とは具体的な所有権移転がなされるのか、つまり第1段階の債権的意思表示と第2段階の物権変動を目的とする意思表示と常に別に(独立)になされなくてはならないのかという問題です。
○判例はどう評価しているのでしょうか?
→判例は第1段階の債権行為に物権行為も包含されるとしています。すなわち物権行為の独自性を認めていません。
○それでは具体的に判例を見ると?
→1/特定物の売買、売買予約の完結、贈与、代物弁済契約の場合、合意乃至意思表示と同じくして当該物の所有権移転効果が生ずる(大判昭13、4/22など)。
2/不特定物の売買の場合、当該目的物の特定により、当然に所有権が移転する(最判昭35、6/24など)。
3/売買契約解除の場合、所有権は当然に売主に帰属する(大判大10、5/17)。
○但し、学説の論争は存在します。
→判例を支持する「物権行為独自性否認説」VS独法系の考え方をわが国の民法上でも解釈論として展開しようとする「物権行為独自性是認説」
○では、その学説論争の実益は?
→両説共に債権行為と物権行為が概念的に区別されることを否定していません。また当事者間での所有権移転の効果を留保する特約(例えば契約締結時には所有権移転の効果を発生させないものとし、後日代金完済等があったときにその移転の効果を発生させる、など)は、独自性否認説も否定するものではありません。
○そうなると、この「独自性の問題」とは一体何の意味があるのでしょうか?
→要するに、上記のような「特約」が存在しない場合に、当事者間の法律行為を如何に解釈するか?というかなり限定した場面にその目的が限定されることになります。(後半の2に続きます)